2013年御翼6月号その4

寄り添うことの大切さ―柏木哲夫医博

 

熱意 ―― あなたはそれが必要だ、それを育てなさい
 熱意(enthusiasm)とはいったいなんであろうか? どのようにしたらそれを身につけることができるだろうか? この言葉はenとTheosという二つのギリシャ語から来ている。文字どおりこれを訳すならば、それは「神のなかに」という意味である。われわれはこのような人々のことを神霊に感じた人といっている。神の霊に鼓舞された人々である。あなたの人生を神の霊でみたしなさい。そうすればそこからあらゆる種類の力がほとばしるはずである。古代ヘブライの預言者の言葉を借りれば、「神の熱意がそれを完成したもう」のである。
 あなたの人生を幸福な積極的な信仰で養いなさい。そうすればあなたはつぎのことを発見するはずである。
一 偉大な機会を見つける。
二 すばらしい解決策を見いだす。
三 不可能な障害を克服する。
四 神があなたのために用意された意外な贈りものを手にする。
五 日光があらわれるまで暗い雲をおしのける。
 ロバート・H・シュラー『あなたは思いどおりの人になれる』(産能大学出版部刊)より
 柏木哲夫医学博士(内科医・精神科医、淀川キリスト教病院名誉ホスピス長、大阪大学名誉教授、金城学院大学元学長)は、日本で最初にホスピス・ケアを始めたクリスチャン医師である。(淀川キリスト教病院でホスピス・ケアが始められたのは1973年。)
 キリスト教の精神が広くは根付いていない日本では、医師の中には、何がなんでも疾患を取り除くべきだ(そのためには患者が弱ってもかまわない)≠ニか、(物体としての)人体を直すことだけが医療の目的・勝利だ(患者がどのように感じるかということはどうでもいい)≠ネどといった誤った考えに陥りがちで、ホスピスのような活動を、誤って敗北主義≠ネどと捉えてしまう医師が、かつて多数いたという(ウィキペディアより)。そんな日本で、ホスピスを始めるために、どれだけのエネルギーと情熱が必要であっただろう。柏木先生のその熱意は、神の御前において謙遜であり、神の霊で満たされていることから来るのだ。
 柏木先生は現在、東日本大震災の被災地を訪れ、被災者に「寄り添う」働きをしている。「励ます」と「寄り添う」の違いは、励ますとは上から「がんばりなさい」と言って、外から人を動かそうとすることである。一方、寄り添うとは、同じ立場に立って、苦しみを共にし、相手には先に進む力があると信じて横から寄り添うのだ。ホスピスにおいて先生が体験して来たことは、多くの患者が平安のうちに死を迎える力を持っているのだという。但し、苦しみや不安を軽減するために寄り添ってあげることは必要なのだ。そして、最後には、人の心も体も魂を背負って救いへと導くことのできるお方がおられることを知り(「わたしは背負って、救い出そう」イザヤ書四六・四)、機会があればそれを伝えられることが、平安に生きる上で大切なことなのだ。そこに、クリスチャンの使命と生きる情熱とがある。
 柏木哲夫『使命を生きるということ』(青海社)より

 

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